進化論の衝突

去年10月に出たNature誌のこの記事:


Does evolutionary theory need a rethink? : Nature News & Comment

 

「進化理論を再考すべきか?」という問いに対して、「再考すべき!」という革新陣営と「その必要なし!」という保守陣営のディベートという形式になっていて面白いです。

革新陣営の方は、現在の「標準理論」である現代総合説があまりに遺伝子中心的で、進化に重要な数々の現象、たとえば

  • 発生学的バイアス (Developmental bias)
  • 可塑性 (Plasticity)
  • ニッチ形成 (Niche construction)
  • 遺伝子以外の継承 (extra-genetic inheritance)

などを無視していると批判します。

これに対して、保守陣営の方は、標準理論は拡張され続けており、上記の現象もすでに取り込まれていると主張しつつも、最終的に重要なのは遺伝可能な形質の変異(=遺伝子変異)であるとして、遺伝子以外の継承が進化に重要であるとする考えを批判します。

 

この論争を見ていると、保守陣営が革新陣営を圧倒している印象を受ける人たちもいるようです。(上記記事への反応の一つ:「学生が論争について論争する」

http://www.nature.com/nature/journal/v515/n7527/full/515343a.html

たしかに保守陣営の主張はまったくもって真っ当です。たとえば、理論は観察事実に基づいて構築すべしという主張やダーウィンの自然選択とメンデルの遺伝法則に基づく理論は、現代科学の基礎をなす強固な体系であり、これはどう見ても否定できそうにありません。

 

では革新陣営は「トンデモ系」の理論を展開して、保守陣営に戦いを挑んでいるのかというと、少なくとも見た目はそうでもなさそうです。上に上げた4つの現象はどれも観察事実ですし、自然選択は(遺伝子型ではなく)表現型に働く以上、表現型に関係するこれらの現象はどれも進化に重要そうに見えます。

 

この論争、なにかが噛み合っていない印象も受けます。どこが問題なのでしょうか?